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企業買収ファンドの儲けと価値(1)

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Chicago Professional Educationは、金融・コンサルティング・マーケティングなど、さまざまな仕事のエッセンスを学べる場にしてゆきたいと思っています。ですが、今は企業価値評価(バリュエーション)プログラムを募集中なので、今回は企業買収ファンドについて書いてみたいと思います。

企業買収ファンド(バイアウトファンド)とは何か

一昔前に、ハゲタカという小説が発表され、ドラマにもなりました。小説の方は続編が出ており、四作目のグリードが最近出版されています。小説もドラマも面白く、私はこの小説を読んで投資銀行への転職を志しました(企業買収ファンドではなく)。

初期のハゲタカシリーズの主題は、企業買収ファンドです。企業買収ファンドにも実際にはいろいろと種類がありますが、シリーズで扱われているのはバイアウトファンドです。

バイアウトファンドとは、投資家からお金を集め、そのお金を使って企業を買収し、数年後に買収した企業を他社に売却するか株式市場に公開することによって、リターンを得る投資ビジネスです。米国で始まった投資手法で、米国では1980年代に最初のブームを迎えています。

潰れそうな危ない会社に襲いかかって乗っ取り、従業員をクビにしたり会社の資産を売り払ったりして会社を食い尽くす、、というネガティブなイメージがバイアウトファンドにはあり、そのためにハゲタカと呼ばれていたこともあります。このイメージは現在においては誇張で、またバイアウトの手法が穏やかになった(?)こともあり、バイアウトファンドのイメージは昔に比べると良くなっていると思います。しかし、大手バイアウトファンドでパートナーを務めていたミット・ロムニーが直近の大統領選挙に共和党候補として挑戦した時も、ロムニーは最後まで「従業員のクビを切って儲けてきた」という批判にさらされていましたし、米国においてもバイアウトファンドは理解が難しく論争になりやすいようです。

さて、初期ブームの頃の小説や映画になる世界は別として、現在のバイアウトファンドは実際にどんなことをするのでしょうか。少し、細かく見てみましょう。

お金を集める

まず、バイアウトファンドは投資家からお金を集めます。私はこんな業界に詳しく、これまでに案件で年率○○%も投資家のみなさんを儲けさせてきました。これから新しいファンドを立ち上げるので、お金を出して下さい!と投資家にお願いしてまわります。バイアウトファンドには、誰でも投資できるわけではありません。上場されている株式とは異なり、すぐに換金できないなど投資の難易度が高いため、機関投資家や年金基金などのプロが投資をします。余談ですが、アメリカの私立大学は巨額の資金運用を行っており、彼らはバイアウトファンドにも多く投資を行っています。アメリカの大学は研究者の給与水準が日本に比べると高いことや奨学金が優秀な学生に出ますが、その資金の一部はバイアウトファンドのリターンにより賄われているわけです(こちらのブログに詳しく書かれています)。

案件を探す

さて、無事にお金を集めることができたら、次は投資先の発掘です。いくら企業を買いたいと思っても、買い手を探している企業など簡単には見つかりませんので、バイアウトファンドは何年もかけて投資先と関係を構築し投資の機会を探ります。業界のカンファレンスに顔を出して見たり、候補企業の幹部をゴルフで接待してみたり、もちろん金融環境や業界について意見交換をしてみたり、買収の可能性について軽く打診してみたり、あれこれの方法で投資候補企業と関係を構築していきます。バイアウトはリレーションビジネス(投資先企業のキーパーソンとの人間関係が決定的に重要なビジネス)なので、グローバルファンドであっても実行部隊はローカルになりやすいです。

案件が出てきたら、投資を検討する

そうこうしていると、うちを買わないかという会社や株主が出てきます。理由は、会社に大きな変化が必要だけれども公開企業のままだと短期的な利益を求められてやりづらい、オーナー企業で後継者がいないのでプロに会社を委ねたい、大企業が子会社や部門を切り出すので買って欲しい、など、いろいろあります。

やった、やっと案件の話が来た!となっても、バイアウトファンドは何でも投資するわけではありません。そこで改めてさまざまな角度からデューディリジェンス(投資先の調査)を行い、その会社に投資をして儲かるか、きっちりと見定めます。さらに、自分たちの儲けを最大化すべく、投資契約の交渉をゴリゴリと行います。私はMBAで多くのバイアウトファンドの方にお会いしましたが、「ああ、この人はきっと頭も良くて交渉もうまいんだろうな」と思わせられるイカつい方が結構いらっしゃいました。

投資する側と、投資される側(あるいは株式を売却する側)が晴れて合意すれば、やっとファンドは預かったお金を使って会社を買収することができます。

投資先の価値を上げる

投資したら寝ていれば会社の値段が上がって儲けられるかというと、そんなことはありません。バイアウトファンドは、投資先の価値を上げるべく、取締役会に出て意見をしてみたり、マネジメントからアドバイスを求められたら助言をしたり、コンサルティングサービスを提供したり、買収候補の会社を見つけて来たり、投資先が企業買収に取り組む時は手伝ってみたり、どうしても投資先の成績が悪かったらマネジメントチームを入れ替えてみたり、いろいろなことをして投資先の価値が上がるように努力します。バイアウトファンドは少数精鋭なので、投資先が増えると投資先を管理するのも大変そうです。

投資先を売却する

何年かして、会社の業績が良くなったら、長く付き合ってきた投資先と涙を飲んでお別れします。ストラテジックバイヤー(投資先と一緒になるとシナジーがある事業会社)に売却する、株式公開する、他のバイアウトファンドに転売する、などの方法で投資先企業を売却してお金にかえます。投資時点に比べて業績が改善した分、会社の価値は上がっているはずなので、これで儲けがえられるはずです。バイアウトファンドは、投資先を売却できないと困ってしまいます。投資先が売れなかったので、投資先の株式を皆さんにお返ししますと言って受け取ってくれる投資家はいないからです。ですので、バイアウトファンドは投資する時点でこの会社は将来売れそうかを事前に検討します。これは、ベンチャー投資でも同じです。

投資家にお金を返す

最後に、投資家にお金を分配します。この時、儲けのいくらかをバイアウトファンドのメンバーも受け取れるように契約をしていることが一般的です。アメリカのMBA卒の一番人気の就職先はバイアウトファンドですが、給料が高いのもその理由のひとつ。私が読んだニュースでは、年棒3,500万円で就職したMBAホルダーが今年はいるとか(!)。なぜ、バイアウトファンドが儲かるかというと、投資家から高いフィー(手数料)を投資に際してとる上に、儲けが出たらその何%かをがっぽりと少人数で持って行くからです。

うまくいって投資家に儲けを還元できたファンドのメンバーは、次の資金を集めて新しいファンドを立ち上げるべくはじめのプロセスに戻ります。失敗したファンドには、もう誰も投資してくれません。プロの世界は甘くないので、別の仕事を探すことになります。

まとめ

さて、まとめるとバイアウトファンドは「会社を安く買って価値を付けて高く売る」ということを営む人たちです。では、価値を付けて高く売るって、もう少し具体的には(理論的には)どういうことなのでしょうか。長くなったので、次回に続きます。

Image courtesy of ddpavumba / FreeDigitalPhotos.net