Creation. Evaluation. Action.

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デザインスクールのMさんにお話を伺う

先日、シカゴにある有名なデザインスクール(IIT Institute of Design)の日本人留学生のMさんとお話をさせていただきました。彼は、留学前はコンサルティング会社で働いていたそうです。米国では、シリコンバレー界隈を中心に「デザイン」の重要性がここ数年クローズアップされており、IDEOというデザインに特化したコンサルティング会社は特に有名です(IDEOホームページに掲載されている、日本でのIDEOの活躍についてインタビューした日経の記事はこちら)。インタビューの記事でも軽く触れられていますが、ここで言うデザインは、パッケージのデザイン、というレベルの話だけではなく、ユーザーのサービスや製品経験をどのようにデザインするか(ユーザーエクスペリエンス)や、もっとおおもとに立ち返ってユーザーの問題をどのように発見しそれに対する解決のアイデアをどのように生み出すか、といった話を含みます。このように盛り上がっている米国のデザイン業界ですが、日本からビジネスバックグラウンドでデザインスクールに留学する方は少ないです。

デザインはCreation、コンサルティングはEvaluation

さて、Mさんに伺った内容の中で特に印象に残ったのが、「デザインはCreation(創造)でコンサルティングはEvaluation(評価)」というお話です。(響きがカッコいいので、以後英語で説明します(笑))

まず、Mさんによるとコンサルティング基本的にEvaluationを行う仕事であるそうです。例えば、企業が新商品の投入を市場に考えている場合、それが「戦略的かどうか」はかなりの程度Evaluationができるそうです。例えば、競合商品との関係を分析したり、市場でのポジショニングを調べてみたり、ということですね。これらのEvaluationのスキルは、MBAで学ぶ領域とかなり重複すると思います。

これに対して、デザインスクールではCreationを学ぶそうです。例として伺ったのは、地下鉄の駅にある自動販売機の話。自動販売機の売上を伸ばすための施策を考えるようにデザインコンサルティング会社が依頼された際に、彼らがしたことは、「ひたすら自動販売機で買い物をする人を観察し続けること」だったそうです。このアプローチは、IDEOのホームページにDESIRABLITY(HUMAN)(望ましさ)と書かれている、「人間中心」に解決策を考える方法であるとか。そして、彼らがクライアントに提案した内容は、「自動販売機の上に時計を置きましょう」というものだったのだそうです。え?という感じですが、自動販売機で買い物をする人がまず何をするかというと自分の持っている時計を見るらしいのです。今から買い物をして、電車に間に合うかを確認しているのですね。そこで、電車に間に合うかがパッとわかるように時計を置いたら、売上が伸びたということでした。面白いですね。

Creation. Evaluation. Action.

今、大学の授業で、ビジネスプランを考えているのですが、Mさんとは、ビジネスプランをゼロから考えるのはCreationですねという話になりました。どのような商品を、どのような市場に、どのように提供するのか。これはかなり難しくて、定石というほどの方法論もなく、創造という言葉がピッタリです。しかし、とりあえずひとつアイデアを思いついたら、そのアイデアをEvaluationすることはできます。どう見てもうまくいかなそうなアイデアと、確かにうまくやれば成功しそうなアイデア、これは分析したり比較したりすることでそれなりにわかるのかなと。(もちろん、Evaluationはしようと思えばどこまでもできてどうにでもケチをつけられるので、Evaluationは万能ではまったくありません)

もう一つ話を拡張すると、実際には最後にActionがくるのかなと思います。考えてCreationし、Evaluationしてうまくいきそうだと判断したものを実際にActionしてみる。もちろん、Evaluationに時間をかけるよりもActionを重視しフィードバックを素早く回して改善に結びつけていく考え方もあり、Creation→Evaluation→Actionと直線で並ぶものではありませんし、Evaluationのプロセスの中でも評価の切り口を考える際には創造性が求められることもあるのですべてのプロセスがこの3つに綺麗に分けられるわけでもありませんが、仕事がCreation、Evaluation、Actionの3つに分けられると考えるのは物の捉え方としてそれなりに真実を突いているのではないかなと思いました。

Creation、Evaluation、Actionのバランス

もうひとつここから考えたのは、仕事によって求められるこの3つの程度は異なるだろうなということです。例えば、私が経験した法人営業は、普段は「少しのCreation、それなりのEvaluation、高いAction」が求められる仕事なのかなと。状況判断は正確にしないといけないので、それなりに評価は必要ですが、営業なのでとにかく実行しないと始まらない。ただこのバランスは、例えばライバルに負けそうな厳しい状況だと、「かなりのCreation、それなりのEvaluation、とても高いAction」に変化するのかなとも思います。逆転をするためにはたいがいアイデアが必要(それは、顧客と会話をする時のちょっとした工夫かもしれないし、大胆なアプローチ方法の変更かもしれない)で、それはまさに創造です。そして、考えついたアイデアが突拍子もないものだったら、行動力もかなりに必要になると。

これは、もっとルーチンな仕事だと「ゼロのCreation、ゼロのEvaluation、ひたすらAction」になるかもしれません。もしくは、定型で決まった調査レポートを書くような仕事だと、「少しのCreation、ひたすらEvaluation、たまにAction」ぐらいになるのかもしれない(笑)。

問題なのは、本当はCrationやActionが必要なのに、EvaluationばかりしてCreationやActionしたつもりになっている場合でしょうか。一生懸命、無駄な資料ばかり作っている場合がこれに当てはまるかもしれません。本当は困難な状況を打破するためにCreationとEvaluationを行ったり来たりして何か新しいやり方を捻り出さないといけないのに、とりあえず頭を使わずにひたすらActionしているような場合も、まずいですね。

いずれにせよ、Creationが大事でEvaluationはいらないといった極端な話ではなく、状況に応じて、それぞれが求められる程度が変わるということなのかと思いました。PDCA(Plan/Do/Check/Action)とはまた違う切り口で、Creation、Evaluation、Actionで仕事の進め方や状況を整理するのも、役立つのではないでしょうか。

人によって、この中のどこが好きかにも違いがあると思うので、自分のやりたいことを見つめ直す時にも、役立つかもしれませんね。Creationが大好きな人が金融機関でアナリストをやったら不幸になると思うし、Evaluationが何より好きな人は起業家には向いていないと思うので(笑)。

教育が、どこを伸ばすように設計されているか、考える際にも役立つかもしれません。日本の教育はEvaluationの力を高めるには向いているのでしょうが、やっぱりCreationとActionを伸ばすようにはできていないのでしょう。Evaluationももちろん大事ですが、今の教育はバランスが悪いので、CreationとActionの力をどうやって伸ばすか、という話になるのだと思います。

Image courtesy of Carlos Porto / FreeDigitalPhotos.net