MBAで得たこと

f:id:career-mountains:20121002161956j:plain
入学した年の秋のシカゴ大学。思い出の一枚。


まだ、ファイナルプロジェクトや試験が残っていますが、2年間のMBA生活も終わりが近づいてきました。すでに他の学校は卒業を迎えているところも多く、出遅れ感(?)は否めないのですが、ここで簡単にこの2年間で得たことを振り返ってみたいと思います。

はじめての海外暮らしをし、いろいろな国の人とコミュニケーションがとれるようになった

留学生活で一番直接的に得たものは何かと聞かれたら、迷いなく「いろいろな国の人とコミュニケーションをとれるようになったこと」と答えます。今でもリスニング力ではアメリカ人同士の雑談に?マークが付くことは多く、話す力も書く力も留学前に毛が生えたぐらいで私の英語力が留学を経て劇的に高くなったとは言えませんが(汗)、英語で様々なバックグラウンドの人とやりとりをすることに抵抗はなくなりましたし、必要に迫られれば言うべきことを言う姿勢も身に付きました。シカゴのベンチャー企業にコンサルティングするプロジェクトで、ミーティング後に私が相手の会社のCEO(難し人物としてプロジェクトメンバーに認識されていた)にヘタクソな英語でプロジェクトへの懸念を立ち話で伝えたところ、他のメンバーに「お前、あのCEOにvoluntaryに話しかけて何か言ったのか」と言われたこともあります。

仕事で海外の人と接するのとの最大に違いは、留学では学生というフラットな立場で本音で付き合いができるということです。仕事だとお互いに立場があるので、言えること、言えないことがあったりするわけですが、学生はしがらみがないのでお互いに素で接することができます(留学を経て、アメリカ人は立場をわきまえて話すので、仕事の場では結構本音を言わないということがわかりました)。そこで、「アメリカ人はこういうのが好きなんだな」とか、「こういう物事の進め方は世界でそんなに変わらないんだな」とか、コミュニケーションの基本を学ぶことができました。そうそう、今となっては遠い昔の思い出ですが、アメリカに来た当初は自宅の電気を開通させるのもアメリカ流サービスの洗礼を浴びて一苦労でした。

また、学生生活を通じて仲の良い友人を世界中に何人か作ることができました。忙しい学校生活のさなかに食べ物を持ち寄ってバーベキューをしたりするのは楽しいものです。卒業をしていろいろな場所に散らばっていったら会うのも難しくなるでしょうが、長い人生のどこかでまたゆっくりと再会したいものです。

世の中を理解する軸を深められた

MBAの効果で二番目にあげたいのが、世の中を理解する大きな軸を深く学ぶことができたということです。ビジネス教養、といったら言い過ぎかもしれませんが、留学前に比べると自分の視野は大きく広がっていると思います。

例えば、授業で様々な「科目」に触れて、ビジネスで求められるスキルのインデックスを持つことができました。現場のビジネスの深さにはビジネススクールの個別の授業はもちろん適いませんが、「この問題を解決するにはどういうとっかかりがあったっけ」という疑問が浮かんだ時に解決のきっかけとなるインデックスを持つことができたのは、長い目で見ると役に立つような気がしています。

シカゴは比較的アカデミックな色彩が濃い学校で、授業でもアカデミックペーパーを読まされたりすることがあるのですが、社会人生活を経た後にアカデミックなものの考え方に触れたことも価値があるのではないかと、2年間の終わりに近づいて感じています。私は経済学で使われる難しい数学はサッパリわかりませんが、シカゴMBAではそんな私にも(出来る限り)わかるように、単純化したモデルやわかりやすい統計で経済や金融の考え方のエッセンスを教えてくれ、自分でそれを再現することが求められます。はじめはそれを何とも思っていなかったのですが、最近はその物事の本質を単純化して分析し示唆を出す考え方そのものを美しく有用だと感じるようになりました。仕事でも、自分がこのような考え方をできるように多少なりともなっているといいのですが。

また、様々な業界の人と話をする機会を得て、世界に対する見方も広がりました。忙しく働いていた時は、どうしてもその時々の仕事や業界のことだけに目を奪われてしまいますが、学生としていろいろな業界のシニアからジュニアまで様々なポジションの方と話をさせていただく機会に恵まれ、視野を広げることができたと思います。MBAの卒業生でプライベートエクイティ業界の大物の話を聞いたこともあれば、シカゴの学部を出てアフリカで単身事業を立ち上げた女性と話をさせてもらったこともあります。

もうひとつ忘れてはいけないのは、シカゴにいる日本人の方との付き合いです。海外に住んでいる日本人には結構面白い人が多く、またお互いに学生で近くに住んでいれば会う時間をやりくりすることもそれほど難しくありません。シカゴの日本人のコミュニティでお会いできた方々とは、帰国後も末永くお付き合いをさせていただきたいと思っています。

自分を見つめ直す機会を得られた

上記の学びや人との出会いとも重複しますが、社会人生活を経た後にいったん頭の中を白紙にして自分の強み、弱みや興味関心について純粋な気持ちで見つめ直す時間を持てたのも、個人的には良かったと思います。そのために大きなお金を払っていると考えるのもどうかという気もしますが、仕事で時間に追われているとそのようなことを考える心の余裕もなかったというのも事実です。

MBAという高品質のビジネス教育を通じて教育について理解を深めた

最後に、これは私の興味関心から来る個人的な学びですが、自分はビジネスをどうしたら学ぶことができるのか、ビジネス教育に関心を持っています。そんな私にとって、ケースディスカッションからアカデミックなやり方まで科目によって先生によって千差万別なハイクオリティな授業を実際に体験し、MBAというコミュニティがどのように運営されているかを知ることは多いに価値がありました。

トップ校のMBAは、高いお金を払って世界中の人が入学しようとする、「世界最高の」ビジネス教育のはずです。本当にこれが現代において「最高の」ビジネス教育かどうかは個人的には思うところがありますが、長い蓄積に裏打ちされ質が高いものであることは間違いありません。

MBAの価値は長い目で見ないとわからない気がする

MBAは、一義的には転職やキャリアアップの機会を提供してくれる学位で、そのために必要なスキルを学ぶことができる場です。学びに意欲的であればあるほど、目標がはっきりしていればいるほど、MBAで得られる学びは多くなると思います。ですので、MBAを志す方、またこの夏からMBAに入学する方には、「なるべく具体的に高いキャリアや人生の目標を設定して、その目標に達成するためにMBAという機会を存分に使って欲しい」と申し上げたいです。ぼんやりと留学するのと、具体的な目標があるのとでは、得られるものが大きく異なります。

で、もちろんMBAを通じて目先のスキルやネットワークも得られるわけですが、2年間の終わりに感じるのは、何だかそれよりも大きなものを得られたような気がする、という感覚です。率直に言って、私は実務能力は働いていた時よりも格段に落ちていると思います。それは、2年間学生をやっていたので当然で、短期的にはマイナスです。でも、長い目で見たら大事になってくる(はずの)、視野の広さやネットワークは大きく広がったような気がします。それがどれぐらい本当に広がっていて、どれぐらい自分の仕事や人生に活かされるものなのかは、卒業して5年、10年経たないと判断できないというのが正直なところです(※)。

この経験が活きていると胸を張って言えるように、また働いてきたいと思います。とりあえず、毎朝ちゃんと起きられるか心配でなりませんが。。みなさん、今後とも宜しくお願いいたします。また、MBA留学に興味のある方は出来るだけ協力させていただきたいのでご連絡下さい。

MBAで何を一番得たと感じるかは、人によって大きく異なります。もしも、私が数年早く(若く)留学していたら、目先のスキルやネットワークの方により大きなバリューを感じていたかもしれません。