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香港とシンガポールで考えた移民とか子育てとか

今月、香港とシンガポールに出張があり、どちらでも空いた時間に友人に会う機会にめぐまれました。今回は、ブログのテーマから少し離れて、友人に聞いた話を書き綴ってみたいと思います。

中国本土消費の香港経済への影響


九龍の南に中国本土と直通のフェリー乗り場がある

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香港島から地下鉄で九龍に渡ると、フェリー乗り場があります。友人が案内してくれたのは、フェリー乗り場の近くのショッピングエリア(すいません、名前は忘れてしまいました)。

写真は、世界でパリ本店に次いで二番目に大きなルイヴィトンですが、どこもかしこも中国本土からの買い物客であふれています。このルイヴィトンがある通りにはその他にもブランドショップがズラリ。近くにある大きなショッピングモール(デパート?)の中も、大きなスーツケースを抱えた中国本土の買い物客で溢れています。その消費パワーたるわ、半端ではありません。

友人の解説によると、この場所は中国本土から直通のフェリー乗り場が発着する場所で、香港に買い物のためだけに訪れる中国本土の買い物客であふれているのだそうです。また、ここにショップを出すことは中国本土へのブランドアピールとして広告効果が高く、賃料が非常に高いにも関わらず採算度外視で出店するショップも多いのだとか。確かに、そのような地区があって、最近中国本土からの消費が少し減って賃料が下落傾向にあるという記事を新聞で読んだことがあるような気がします。

多くの買い物客を見ながら感じることは、香港経済はこの本土の経済力に依るところが時とともに大きくなっているのだろうなあということ、そしてやはり中国の消費力は凄いという(当たり前の)ことです。銀座での中国人観光客の購買力も半端ではありませんが、中国と地続きの分、香港は凄いです。

友人によると一方で、中国の買い物客を目当てに続々と立ち上がるブランドショップと、その賃料高騰で耐えられなくなって昔からのお店が出て行ってしまうことについて、古きよき香港を知る昔からの香港市民からは反発の声も多く上がっているといいます。

移民を通じて進む香港の中国本土化

香港では、先日まで香港政府が提示した民主化案に対する学生の抗議運動が大きな報道となりました。香港では、この学生たちの運動を支持する声も多くある一方で、彼らを商売の邪魔とみて反対する声もそれ相応にあったといいます。

友人によると、いま香港市民の2割〜3割は中国本土からの居住者もしくはその2世などにあたるそうです。彼らはイギリス統治時代に生まれ育った香港市民とは感覚が違うので、どうしても意見の違いが出ることが多くなるようです。

現代は民主主義が「善」とされる世界で、「一人一票」の平等原則を覆した国造りを先進国で行うことは(隕石が地球に衝突して世界の終わりが来るとか人間を凌駕する人工知能を人間が制御できずに機械に支配される時代が来るとかがない限り)不可能だと思います。それであれば、国の姿は、国民が物事をどのように捉えるか、そしてそれぞれの捉え方をする国民の「数」で決まると考えます。1997年の返還からすでに18年が経過し、人口構成が変化している香港が、これからさらに変わっていくことは避けられないように思います。

先日フランスではイスラム過激派によるテロ事件がありましたが、過去数十年において多くの先進国は人口減少の中で移民を受け入れるという選択をとりました。人口増加、さらに言えば単純労働に従事する単価の安い移民の増加は、短期的には移民が従事する業種の価格を下落させるとともに移民により消費が増加するため経済にとって明白なプラスとなります。しかし、そのような移民が既存の社会に融合することは既存社会が相当な努力を重ねなければ難しく、移住先が「母国」となる移民の二世・三世が格差が維持されながら増加するに至って大きな社会不安の原因となり、また経済的にもベネフィットよりもコストの方が目につくようになってくる、さらに移民社会と既存社会で考え方が異なれば異なるほど国全体として国の進み方に合意がとりにくくなってくる、このようなことが一部の国では時間をかけて生じていると思います。移民政策を長期的にワークさせるためには、受け入れる側にも相応の覚悟と準備が必要なようです。時間をかけて人とともに社会と国は変化するということを、香港のテレビでフランスのテロ事件のニュースを見ながら、ぼんやりと考えていました。

シンガポールはすべてが政策により作られたスーパー都市

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さて、話変わってシンガポールシンガポールを訪れるのは初めてでしたが、シンガポールは凄いですね。空港から中心市街までハイウェイで移動しましたが、豪華さで有名なチャンギ国際空港にはじまり、ピカピカの高層アパートメントが立ち並び、美しい公園や巨大な植物園など、どこもビックリするほど人工的で美しい景色です。友人に尋ねたところ、空港から中心街までの「中心街の東側」の地区だけでなく、シンガポールはどこに行ってもそのようなピカピカのビルが並んでいるということ。すごい国です。

写真は有名な屋上にプールのあるビルですが、シンガポールの凄いところは次から次へと訪れてみたいと思わせるモノを人工的に作り出すところにあります。ちなみに、ビルの左下にある白い物体はお釈迦様の手がモチーフにされているそうで、「カジノを作ってその隣にエクスキューズでブッダの手を配置するなんてなかなかのアイデアだろ?」とはシンガポール人の友人の皮肉。

シンガポール東南アジアのハブ都市として発展していますが、確かに衣食住すべて(お金さえあれば!)そのレベルは非常に高く、さらに税金が安いとなればグローバル企業がシンガポールに拠点を構えて東南アジア各地に出張で仕事をするというスタイルは非常に納得がいきます。この都市を作り出しているのはシンガポール政府なわけですが、しかしシンガポール国民の多くは政府が何から何まで口出しすることに嫌気も指しているとのこと。タクシードライバー曰く「だって、政府が許可して作られたこのビル、車寄せ以外にタクシーを停めると罰金をとられるのに車寄せがないんだよ、おかしいでしょう」「なんでも規制されるのは嫌だという人は増えているし、今の首相は人気がないから、次の選挙では野党がはじめて政権をとるかもしれないよ」。ドライバーに、日本でも万年与党を降ろして野党に政権を任せてみたら大変だったのだよと説明したら笑っていました。

家政婦と子育てと移民と

友人夫婦と話していて最も興味深かったのが家政婦の話。その日は日曜日だったのですが、街のところどころで移民と思わしきアジア系の人たちが集まっています。みんな、ピクニックのようにシートを広げて思い思いにお弁当を食べたり歌をうたったりおしゃべりしたり(こういう景色は香港にもあるそうです)。で、友人の説明によると、「この人達は家政婦さんたち。彼女たちは住み込みで月500SGD(日本円5万円ぐらい)で働いてくれる。日曜日は休みだから、このように外で集まって休んでいるんだよ」と。なるほど、住み込みだから外に出ることが休みになるわけですね。

シンガポールではバリバリ働く家庭では夫婦共働きが当たり前ということで、共働きが可能なのはこのように昼間子供の面倒を見てくれる家政婦がいるからだそうです。ただ、このように至るところで食べ物を広げて集まる移民たちに対して「シンガポール的でない」といって反感を示す人たちもいるのだとか。「住み込みで安い労働力として働いてもらっているのだから休日は外に出て休むしかないのは仕方ないよね」と言ったら友人も同感とのこと。

でも、家政婦が家で子供の面倒を見てくれるから両親がどんな仕事でもできるかというとそうではないようです。友人奥さんはいまとても出張が多く帰りも遅い仕事に就いているのですが、「子供の食事は自分が作らないといけないので、子供ができたら毎日夜7時までに帰れる仕事でないと働き続けるのは難しい」。「家政婦がいないで日本では子供ができたら仕事はどうするんだ?」と聞かれたので、日本では共働きを続けると子供を持つと大変で、専業主婦も多いんだよ、親の支援があれば共働きもできるけど家政婦は一般的でない、と説明しました。すると説明してくれたのがシンガポールの住宅政策。「シンガポールでは住宅の8割以上を国が保有していて、シンガポール国民が住宅を購入する時は多額の補助金が出る。親の支援があったほうが子育てはしやすいから、親の家の近くに住宅を購入しようとすると政府から補助金が追加で出るんだよ」。どこまでも合理的なシンガポールの政策、恐れいります。ただこれには、「シンガポールは狭い(国土が東京23区程度)からその政策はワークするが、日本は広いし親が遠い地方に住んでいることも多いから、その政策は難しいかも」と返しましたが。

実は、同じような共働きと子供と家政婦の話は香港でも聞いていまして、男女ともに働く社会で子供を増やそうと思ったらその解決策にはそんなにバリエーションがないんだろうなと思いました。これはタイムリソースの話なので、あまり民族とか文化とか関係ないですよね。非常に普遍的な論理の話です。

以上、香港とシンガポールのよもやま話でした。いろいろな国と社会を知ることは勉強になり非常に楽しいものですね。お付き合いいただいた皆さん、ありがとう!

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香港でいただいたコーヒー・紅茶ミックス。またいただきたい、不思議な味でした!