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ギリシャ問題あれこれ

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お久しぶりです。現在、ロンドンでギリシャ国民投票の結果をBBCで見ております。

地道に正しいことに取り組むプロフェッショナルたどれだけいるか

さて、ギリシャの問題がこの一週間で急展開した時に、私がまず思い浮かべたのは、ギリシャがいかに借金漬けの国かを力説されていたシカゴ大学のカシャップ先生は何か言っとらんかなということでした。

で、検索してみたら、出してました、カシャップ先生によるギリシャ問題の解説。

A Comprehensive Summary of the Greek Crisis | IGM Forum

授業と同じ、文字ベタ打ちのPDFでありますが、そもそも何でギリシャが借金まみれになったのかから丁寧に書き起こしており、大変参考になります。これを読むと、ギリシャ問題を理解するためにはギリシャだけでなくユーロの制度的な問題や、IMF、ECBといったプレイヤーの思惑も理解する必要があることがわかります。

ギリシャ問題は一例なのですが、私が米国で感じたことのひとつに、研究者の層の厚さがあります。英語圏にはびっくりするほどきちんとした研究者がたくさんいるので、大概の問題について、きちんと過去から継続してフォローをしていて、事実を整理し意見を発信する人がいます。

彼らは別に天才ではなく(多くは大変な秀才だとは思いますが)、きちんとファクトを積み上げて分析して今後のことを考えるというプロとして当たり前のことをしているだけです。が、そのようなまっとうなプロがパブリックに意見を発信するぐらいたくさんいるということが、英語圏の強さなんだなと思います。

日本にも、日銀や財務省には結構シリアスにギリシャ問題を追っている人がいるんじゃないかなと思うのですが、そういったプロの意見が組織の秘密にされすぎずに世の中に発信される(あるいは、彼らが仕事上世の中に発信できないことはわかるので、そういう役割を担うプロが外にいる)ということが、世の中を正しい方向に進めていく上では結構大事なんじゃないかなと思う次第です。

ヨーロッパの未来

んで、ギリシャ問題の今後なわけですが、世の中で言われていることですとギリシャはユーロ圏脱退に向けて進んでいきそうです。(注:結局、ギリシャは離脱しませんでした!)ひとつの考え方は、ギリシャがユーロを離脱できれば、短期的には経済はめちゃくちゃになるし国民の預金は政府にぶん取られるしで大変ですが、ドラクマは大変安くなり、円安が日本の輸出を(多少)回復させインバウンド観光を増加させているのと同じように、ギリシャはいずれ経済の回復軌道に乗るかもしれません。

が、問題はその先です。ギリシャが無事にユーロを脱することができると、あれ、実はユーロって脱することができて、しかも苦しみを経た後はわりとうまくやってけるんだ、という先例になります。すると、今の強いユーロに苦しめられている経済の弱い国々はPIGSギリシャ以外(ポルトガル、イタリア、スペイン)など多々あるわけで、この人たちはどうするんだっけという議論が起きるでしょう。

私の記憶が正しければ、EUはヨーロッパの大戦の反省がベースになって統合を志したところにまずはベースがあったはずです(だから、ユーロは経済制度の面では無理があるにも関わらず、拡大してきた)。しかし、EUにはいろいろと制度面の無理があり、例えばドイツはEUで相対的に自国の強さより安い通貨と輸出先の市場を確保して繁栄し、一方で経済の弱い国々は自国の実力に比べて相対的に強いユーロに苦しめられしかもドイツの輸出先となってますます苦境に陥っています。志だけでは経済的な無理を支えられず、ユーロの分解が今回のギリシャから始まるとしたら…。ヨーロッパはEUの統合と深化を進めることで経済的成長を維持しプレゼンスの確保を目指してきましたが、ギリシャ問題を通じて、ヨーロッパの黄昏はその時計の針をまた一歩進めていると言えるかもしれません。