新卒の就職活動についてあれこれ

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Original: Flickr/studio tdes

MBAの採用プロセスと日本の新卒採用プロセスを比較するエントリを書いたのですが、95%ぐらい書いたところで子どもが泣いたのでパソコンを離れている間に消えてしまいました!もう一度書く気力が湧いてこないので、結論だけ書いてもあまり皆さんの腑に落ちないと思うのですが、忘れないうちに結論だけ書いておきます。

就職を考えはじめてから納得して就職を決めるまでには正味1年ぐらいはかかる。このプロセスに必要な時間は変わらないので、このプロセスを学生生活のどこに置いたらよいかを考えるべき

MBAの場合、前職のキャリアがあって、MBA出願のプロセスでMBA後のキャリアについて考えさせられますが、さらにそれに加えて、シカゴの場合は学校が9月に始まった後もう一度キャリアについて学校で考える機会があり、10月後半からオンキャンパスのインターンのリクルーティングがはじまり、年明け1月からインタビューが始まって、それなりの数の人は3月までにインターンのインタビューを終えます。インターンに至るまでの就職活動のプロセスに、正味1年ぐらい考えて行動する期間があると言えるでしょう。感覚的には、日本の新卒でも就職活動に正味で要する期間はそれほど変わりません。今年の日本の新卒マーケットの変更は、就職活動のタイミングを「遅くする」ことでしたが、やることは同じでタイミングをずらしただけなので、ずらした後に他の学校行事があればバッティングすることになります。結局、学生生活のどこかで1年間ぐらいは就職のことを考えて行動する時期が必要なのであれば、それを学業と両立しやすいようにどう配置するかという、解くべきはタイミングの問題ということになります(インターンの活用といった話はまた別の話)。

人気があって多数を採用する業界から順番に選考をするのが、学生にとっても企業にとっても合理的

MBAのリクルーティングでは、採用活動は業界単位で緩やかに順番があり、まず人気が高く人数も採るコンサルティング投資銀行が説明会や選考を行います。それに続いて、他の事業会社が採用活動を行い、最後の方でごく少数しか採用しないPEファンド、VC、スタートアップなどが採用をするイメージ。このプロセスのポイントは、「本命」が後に来にくいので、学生の側が後から「意中の企業から後オファーをもらえたのでやっぱりやめた」とか、「あの業界・企業にトライするまでは就職活動はやめられない」という状態になりにくいことです。この点、日本の今年の採用は、実質的に多くの企業が7月以前に選考を進める中、いま学生から最も人気のある総合商社が8月1日から選考する形となり、この点最悪だったと言えるでしょう。商社に通ったので内定もらっていた会社を辞退する、商社を受けてみるまで就職活動を終えられない、こういう話になることは当然です。これは、学生にとっても、企業にとってもよくありません。双方にとって、人気があって多数を採用する業界から先に選考を始める方が幸せになります。外資は3年生の秋から選考を始めるという現実があるのですから、商社は3年生の冬ぐらいにさっさと選考し、その他の会社はその後に採用をすれば良いと思います。

一時に集中して採用活動をするのではなく、適度に分散し、内定の回答にも余裕がなければ、企業間の本質的な競争にならない

現在の新卒の就活では、自社に囲い込むために、8月1日に拘束する、他社の面接とぶつける、といったことが行われます。これが可能なのは面接期間が集中しているからで、企業の立場にたてばそうしたくなる気持ちもわかりますが、学生にとっては一生がかかっているのですから、このやり方はフェアではありません。MBA採用の場合、業界ごとに緩やかに採用の時期はありますが、基本的には面接が重複するほど過密ではありません。また、オファーを受けた後これを受諾するまでは1〜2ヶ月程度時間があることが普通です(事情を説明すればもっと長いこともよくあります)。こうすることで、学生はしっかりと納得行ってから就職先を決めますし、企業間でもこれは学生に選ばれるための本質的な競争を行うことになります(囲い込みの工夫を企業が行うことは、ただの戦術的な競争で、本質的に企業が自社の魅力で競争していることにはなりません)。もしも囲い込みをやめたら、今まで囲いこんできたような優秀な学生がとれないというならば、それは自社の魅力が足りないか、アピールに問題があるか、どちらかでしょう。あるいは、同じような学生を多数の会社がポテンシャル採用で争う構造が問題の根っこかもしれませんが、それはまた別の話。

MBAでは学校がオンキャンパスのリクルーティングを取り仕切り、企業へ影響力を発揮する

これは、直接に日本の就活で活かすのは難しいかもしれませんが、MBAでは学校がオンキャンパスのリクルーティングを取り仕切り、企業がいつどのように学生にアプローチするかをかなりコントロールしています。同時に、学校は企業に対して学生を真摯に行動させるオブリゲーションを負っており、学生が一度受諾したオファーを後から辞退した場合は、その学生を学校の卒業生として扱わないというペナルティを課します。これは、卒業できなくなるということではありませんが、大学のコミュニティが大事にされる米国ではそれなりに嫌なペナルティで、学校のオンキャンパスのリクルーティングで一度受諾した内定を反故にする人はあまりいません。

日本の場合、大学がここまでリーダーシップを発揮できればよいですが、この仕組を行うには大学が企業にも学生にもメリットを提供できる形でリクルーティングを取り仕切る意思が必要となり、かなり難しいのではないかと思います。学校や専攻によって学事スケジュールは異なるので、究極的に学事スケジュールと就職活動のバッティングをコントロールしようと思ったらここまでやらないといけないと思いますが。ただ、内定辞退の問題についていえば、人気の企業から先に採用活動をする、一時期に集中せずに内定の返事を受ける期間を長めにとる、という手当をすれば、理屈としては減っていくのではないかと思います。

結論

上記のように考えると、10月までに内定者を揃えたいという会社の前提条件をそのままにするのであれば、3年生の秋から4年生の秋まで、基本的には人気のある業界・会社から先行して、各社自由なタイミングで選考したら良いのではないかと思います。本当は、学校が学部ごとに自分たちの事情に合わせてリクルーティングのスケジュールをコントロールするか、せめて学校が自分たちの事情を企業に提供し、企業がその事情を斟酌して学校ごとに採用活動のスケジュールを引くようになると、本当は良いのだと思いますけどね。