仕事と就活の原理原則(1)〜就活は営業である

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Q:これまでいくつか面接を受けたのですが、うまく自分のことを話せたと思った面接でも、落とされることがよくあります。なぜでしょうか。

A:面接は、等身大のあなたを「説明して理解してもらう」場ではなく、あなたが企業が欲しがる人材であることを「営業する」場です。「自分のことを話す」のではなく、「相手が聞きたいことを話す」という姿勢で臨みましょう。

ここ2年ほど、週末を中心に就活中の学生さんの相談に乗っています(東大、慶応の方が多い)。私は人事の経験はありませんが、企業の意思決定の現場で働いており、また「仕事ができるとはどういうことか」「自分に合った仕事とはどんな仕事か」というテーマをずっと考えてきました。そこで、「仕事と就活の原理原則」と題して、私なりの就活アドバイスを連載していきたいと思います。お役に立てば幸いです。

私がマッキンゼーの面接で言われたこと

さて、いきなりですが、私の思い出話。私は、新卒の就活でマッキンゼーを受け、あえなく何人かパートナーに面談をいただいた後に落ちました(残念です!)。その時、一番最後に面談をいただいたパートナーの方から、面談の最後に以下のようなことをいただいたことを今でもよく覚えています。

マ「面接は、あなたを売り込んで下さい、という非常にわかりやすい営業の場だよね。何かアピールしたいことはある?」
私「・・・特にありません。」

・・・今思い返すと、なんてダメなやり取りなんだろうと思いますが(苦笑)、当時の私が就職活動のことをよくわかっていなかったことをよく表すエピソードです。

就職活動とは、営業である

さて、上記のエピソードで既に触れいますが、就職活動とは「自分を営業する場」です。会社は、儲けるために事業をしており、自社で活躍してくれる人材を求めています。つまり、会社には「欲しい人材の要件」がはっきりあり(もしくは、本来ははっきりあるはずであり…)、その要件に合う人を探していると言えます。

よく、学生さんには、自分のアルバイトを思い浮かべて下さい、とお話しします。自分が一生懸命やってきたアルバイトで、新しく自分が人を採用できるとしたら、どんな人を採用しますか?もしくは、どんな人は採用しませんか?居酒屋であれば、元気が良くて明るい人を採用したいと思うでしょうし、見るからに暗そうな人はあまり採りたくないはずです。それと全く同じことを企業も考えている、とお話しすると、多くの学生さんが納得してくれます。

営業の秘訣は、まず相手が何を欲しているか知ること

ところで、営業で一番大事なことは何でしょうか。それは、自社の商品を朗々と説明することでも、カッコよくプレゼンテーションをすることでもありません。営業で一番重要なことは、相手の話をよく聴き、ニーズを深く知ることです。これは、法人ビジネス歴10年の私が自信を持って言えることです(笑)。「最近、子どもが生まれたからそろそろ車が欲しいかなあ…」という顧客のニーズを把握していれば、ファミリー向けの車を提案し買ってもらうことは難しいことではありません。しかし、顧客のニーズを把握せずに、2人乗りのスポーツカーを提案しても売れませんよね。

会社の採用も同じです。就職活動では、会社の採用ニーズを把握した上で、自分が会社の求める人物であることを売り込む。これが鉄則です。自分の話したいように話して、「ああよく自分のことを話せた」というのは、相手の顔を見ずに商品の説明をひたすらするセールスマンと同じで、営業ではありません。

「ありのまま戦略」はあなたの良さを伝えきれないリスクがあるので勧めない

よく、「面接ではありのままの自分をしっかりと表現しましょう」というコメントがあります。これは、「学生さんが自分のことをしっかりと表現してくれれば、自社に合うかどうか面接官が判断してマッチングができるので、お互いに良いよね」という意味ですが、現実にこれを鵜呑みにするのは危険だと私は思います。

もしも、自分のすべてを会社に伝えることができるなら、「ありのまま戦略」は会社にとっても候補者にとってもハッピーだと思います。しかし、実際にはエントリー・シートで伝えられる内容や面接の時間は限られており、候補者は自分のごく一部しか伝えることができません。また、面接官のスキルはバラバラで、限られた時間の断片的な情報から候補者を適切に判断できるとは限りません。したがって、「ありのまま戦略」では、あなたの実像が会社に断片的にしか伝わらず、本当は会社が求める資質をあなたが持っていたとしても、落とされるリスクが大いにあります。これは、大変もったいないことです。

私の例で言えば、私が学生時代に努力し想い出深いことのひとつに、「政治思想のゼミで試行錯誤の末に良い発表ができた」ことがあります。しかし、このエピソードは企業にはまったくウケませんでした(笑)。このエピソードは、私の「深く考えることが好き」というキャラクターを表してはいますが、企業が求める人材像にはあまり合わなかったわけです。しかし、私の特徴はこれだけではありませんから、企業に対しては、私の別の側面をアピールした方が良かったと言えます。

というわけで、私はやはり就職活動は営業だと割り切って、嘘を付かない範囲で相手に合った自分を見せる努力をするのが良いと思います。この考え方には、他にも良い点があります。ひとつは、会社のニーズを知るために会社のことをしっかりと調べなければならないこと(面接の場で、面接官にヒアリングから入るのは難しい)。もうひとつは、結果が不合格だった場合に、どこが悪かったのか反省し次に生かしやすいことです。「自分を表現したけど不合格だった、この会社とは合わなかったんだな」では、「合わなかったから仕方がない」で終わってしまいます。しかし、営業と割り切ってトライすれば、相手への理解が足りなかったのか、伝えるべき自分の特徴やエピソードの選択を誤ったのか、自分の伝え方が悪かったのか、伝えるべきことは伝えたが自分の資質が相手の要求水準に達していなかったのか、反省し次につなげることができます。就職活動を通じて、多いに成長することができるでしょう。

ただし、これは「嘘をついてでも自分を見繕って内定をもらった方が良い」という話ではありません。嘘は会社にばれますし、何よりも嘘をつかないと内定を得られないような会社はあなたに合っていない会社です。入社した後に苦労しますから、自分のためにも、会社のためにもなりません。

さて、うまく営業して内定をもらう頃には、自分がどの仕事に就くべきか決断をしなければなりません。これは、営業とはまったく別の話ですので、また機会を改めて書きたいと思います。

まとめ

  • 面接は、あなたが会社の求めている人材であることを売り込む場、それを忘れない!
  • 「ありのまま戦略」は、自分を伝えきれずに不合格となるリスクがある。内定をもらうまでは、就職活動は営業と割り切る。
  • ただし、嘘をつかないと内定をもらえない企業は、あなたに合っていない。入社してもあとであなたが不幸になるので要注意。


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Original Photo: Flickr/GotCredit